ADHDで説明が下手になるのは順序の問題。話す前に3行で決める

シュタイン

「結局、何が言いたいの」。報告や相談のたびにこの一言を言われる人は少なくない。頭の中では順序立てて話しているつもりなのに、口から出てくる話はあちこちに飛び、聞いている相手はどこが結論なのかわからなくなる。話し終えたあと、自分でも「今の、何が言いたかったんだっけ」と思うことすらある。

これを「要領が悪い」「頭の整理ができていない」と自分で結論づけてしまう人は多い。だが、この記事で扱うのはそこではない。話が長くなること自体や、話しすぎて後で後悔することについては、ADHDで話しすぎて後悔する夜にで扱っている。 あちらは話の「量」と、話したあとの反芻の話である。これに対してこの記事が扱うのは、話の「順序」の問題である。同じ1分間の説明でも、順序が整っていれば伝わり、整っていなければ何分話しても伝わらない。量ではなく構造の話として読んでほしい。

この記事では、なぜADHDだと説明の順序が飛ぶのかという脳の仕組みと、その対処として「話す前に3行で決める」という型を解説する。説明の型そのものは世の中に数多くあるが、それらの多くは「本番になると頭から消えて、結局いつもどおり話が飛ぶ」という壁にぶつかる。この記事は、型を覚えることではなく、話す直前に書くという一手間で本番の本番に対処する。書いているのは、同じ壁に数えきれないほどぶつかってきたADHD当事者のシュタインである。


なぜ説明が飛ぶのか:連想が割り込み、次に言うことを保持できない

説明が飛ぶ最大の原因は、2つが重なって起きている。

1つ目は、なぜADHDは人の話が頭に入らないのかでも書いた「連想が次々に割り込んでくる」という脳の性質である。あの記事では、相手の話を聞いているときにこの性質が働くと、聞いた言葉が処理される前に別の記憶や心配事が割り込み、内容が頭に入らなくなるという現象を扱った。同じ性質は、自分が話しているときにも働く。1つの単語や1つの場面を話し始めた瞬間、それに関連する別のエピソード、別の背景、別の言い訳が次々に立ち上がり、選ばれる前にそのまま口から出てしまう。聞くときは「入ってこない」という形で表れ、話すときは「話が飛ぶ」という形で表れる。入り口と出口が違うだけで、根っこにある脳の性質は同じである。

2つ目は、話しながら「次に何を言うか」を頭の中に保持しておく力の不足である。人が順序立てて話すとき、実は脳の中では「今話していること」と同時に「次に話す予定のこと」「その次に話す予定のこと」を一時的に保持し続けている。この一時保持の領域が、ADHDの脳では狭い。今話していることに気を取られた瞬間、次に話すつもりだった内容がこぼれ落ちる。こぼれ落ちた穴を埋めるように、そのとき頭に浮かんだ別の連想がすべり込む。結果として、話は思いつくままの順番で出てくることになり、聞いている側からは「話があちこちに飛ぶ」ように見える。

つまり、説明が下手なのは頭が悪いからではない。連想が次々に割り込む性質と、次に言うことを保持しておく容量の不足が同時に起きているせいで、話す前に決めたはずの順序が、話している最中に崩れてしまうだけである。この2つは、話す前にどれだけ「今日はちゃんと話そう」と意気込んでも、意気込みだけでは解決しない。意気込みそのものが緊張を生み、かえって連想の割り込みを増やすことすらある。だからこそ、話し始める前の段階で対処する必要がある。

たとえば、上司に「〇〇の件、どうなってる?」と聞かれた場面を思い浮かべてほしい。頭の中では「まず進捗を話して、次に問題点を話して、最後に相談したいことを話そう」と決めていたはずである。ところが話し始めた瞬間、「進捗」という言葉から連想が立ち上がる。「そういえば先週も似たようなことがあった」「あのときはこう対応した」。この連想自体は本題と無関係ではないのだが、話している最中の脳には「今これは本題から外れている」と判断して差し戻す余裕がない。差し戻す余裕がないまま口から出てしまい、気づけば本来3番目に話すはずだった相談事項にたどり着く前に、上司の方が痺れを切らして「結局どうなってるの」と割り込んでくる。この一連の流れは、意欲や誠実さの問題ではなく、順序をその場で保持し続ける仕組みが働いていないだけである。


話す前に3行で決める型:本番中ではなく、本番前に順序を固定する

説明の型を覚えても本番で使えなくなる理由は単純である。話し始めた瞬間、頭の中の容量はすでに「今何を話しているか」を保持することに使われており、「型に沿っているか」を確認する余裕が残っていない。型は本番中に思い出そうとしても遅い。話し始める前に、頭の外にすでに順序を作っておくという発想に切り替える必要がある。

1. 結論・理由・お願いを3行で書いてから話す

  • 具体的な対策:話す前に、スマホのメモでも紙でもよいので「結論」「理由」「お願い」の3行だけを書く。文章にする必要はない。「結論:来週の納期に間に合わない」「理由:先方からの資料が届いていない」「お願い:3日ずらしてほしい」というように、単語をつなぐ程度でよい。
  • ありがちなつまずき:3行のつもりが、書いているうちに背景説明や言い訳まで足してしまい、結局5行・6行に膨らんでしまうことが多い。書く段階でも連想は割り込んでくるため、油断すると3行の型そのものが崩れる。増えそうになったら、増えた部分は口頭で聞かれたときに答える分として残し、書く欄はあくまで3行に固定する。
  • 最初の一歩:次に何かを報告する機会があったら、話し始める前の30秒だけを使い、結論・理由・お願いをそれぞれ5〜10文字で書いてみる。長い文章を書く必要はなく、あとで自分がひと目で見返せる単語の並びで十分である。書き出しそのものについてはADHDでメモが取れないでも詳しく扱っているので、書くこと自体に苦手意識がある場合はあわせて読んでほしい。

これは、日々のジャーナル(書き出す習慣)としてやっている型を、会話の直前という短い時間に当てはめただけのものである。ある50代の受講生は、対談の中で、抱えているやることを「これをやるには何が要るか」だけのシンプルな形に書き出すようにしたところ、頭の中でぐちゃぐちゃに絡んでいたものが整理されたと語っていた。説明が下手なことも同じ理屈で扱える。頭の中では絡み合って見える話も、書けば自然と並ぶ。

2. 口頭で聞かれたら「1分ください」と言って書いてから答える

  • 具体的な対策:不意に「これってどうなってる?」と聞かれ、3行を準備する時間がなかった場合は、その場ですぐ答えようとせず「1分だけください」と言ってから、対策1と同じ3行を書く。書き終えてから話し始める。
  • ありがちなつまずき:「1分ください」と言うこと自体を、失礼にあたるのではないかと恐れて言い出せないことが多い。その結果、準備なしで話し始め、案の定話が飛び、後から「さっきの説明、要するに何だっけ」と聞き返されて、結局もっと時間を使うことになる。
  • 最初の一歩:まず、聞かれてから答えるまでの間に無言で数秒置くことに慣れる。いきなり「1分ください」と口に出すのが難しければ、「少し整理させてください」という一言から始めてもよい。無言で頭の中だけで整理しようとするより、たとえ短くても紙に書いてから話すほうが、結果的に早く伝わる。

これは、なぜADHDは人の話が頭に入らないのかで扱った「理解のタイムラグの事前宣言」の裏返しにあたる。あちらは聞く前に「整理しながら聞きたい」と先に伝える対処だったが、こちらは話す前に「整理してから話したい」と先に伝える対処である。聞くときも話すときも、その場で完璧に処理しようとしないという前提を先に作ってしまう点は同じである。

3. 長くなったら「つまり」で自分に割り込む

  • 具体的な対策:話しているうちに、自分でも「今どこまで話したかわからなくなってきた」と感じたら、途中でも構わないので「つまり」と言って、伝えたかった結論だけを一度言い直す。「つまり、来週の納期には間に合わないので、3日ずらしてほしいということです」というように、最初に書いた3行に戻る。
  • ありがちなつまずき:話が飛んでいることに気づかないまま話し続けてしまい、相手の表情が曇ってから初めて気づくというパターンが多い。気づいた時点ではすでに何分も話が脱線したあとで、「つまり」で戻ろうとしても本人自身が結論を見失っていることがある。だからこそ、対策1で3行をあらかじめ書いておくことが前提になる。書いたメモは話している最中も手元に置いておき、迷ったらそこに視線を戻す。
  • 最初の一歩:話しながら「あれ、今何の話だっけ」と一瞬でも思ったら、その瞬間に「つまり」と口に出す練習をする。完璧に話し終えてから修正するのではなく、話の途中で何度でも軌道修正してよいと自分に許可を出すことが、この対策の本体である。

これは、聞くときに使う「オウム返し」の自分版である。相手の言葉を繰り返すことで連想の暴走に割り込む方法はなぜADHDは人の話が頭に入らないのかにまとめてあるが、話すときは相手の言葉の代わりに、自分で書いた結論に割り込む形で使う。

3つをどう組み合わせるか

3つとも毎回すべて使う必要はない。準備できる時間があるかどうかで、優先順位を変えるとよい。事前に話す内容がわかっている報告や相談では、対策1をそのまま使う。話す前の数十分、数時間の余裕があるなら、3行を書く時間は十分に取れる。不意に質問される場面では、対策2で一呼吸置いてから3行を書く。この一呼吸が、連想が口から先に出てしまう前に順序を作る時間になる。すでに話し始めてしまい、脱線に気づいた場面では、対策3で「つまり」と言って書いた3行に戻る。話す前・話す直前・話している最中、それぞれの段階に対応する対処を1つずつ持っておくと、どの場面で説明が飛びかけても、どこかで拾い直せる。


よくある質問

報連相のたびに「結局何が言いたいの」と言われる

これは順序の問題であり、内容を理解していないからではないことが多い。話す前に結論・理由・お願いの3行を書く習慣を、まずは重要な報告1件だけに絞って試してみるとよい。すべての会話に適用しようとすると準備自体が負担になるため、失敗が許されない場面から始めるほうが続けやすい。

文章だと書けるのに口頭だと駄目

これはよくあるパターンである。文章では、書きながら消したり並べ替えたりできるため、連想が割り込んでも後から整理し直せる。口頭にはその猶予がない。だからこそ、口頭で話す前に文章で結論を固定しておくという、この記事の対策がそのまま効く場面である。文章を書く力があるなら、それを口頭の直前に使うだけでよい。

面接や電話など書く時間が無い場面はどうすればよいか

事前に準備できる場面であれば、想定される質問に対して3行を先に書いておく。面接であれば「志望動機」「強み」「今後」など、聞かれることがある程度予測できる項目ごとに3行を用意しておけばよい。突発的な電話でその場で書く時間がない場合は、対策2の「1分ください」を短縮し、「少々お待ちください」と言って数十秒だけ手元にメモを取ってから話し始めるだけでも効果がある。

順序立てて話せる人が羨ましい

話が面白いこと、初対面でも打ち解けやすいことは、ADHDの当事者が自分の良い所として挙げる特性でもある。連想が豊かに湧くからこそ、話に厚みが出て、聞き手を飽きさせない。この連想の豊かさ自体は資産であり、なくすべきものではない。問題になっているのは連想の量ではなく、それを話す前に並べる順序が決まっていないことだけである。順序だけを道具で補えば、連想の豊かさはそのまま活かせる。


まとめ

  1. 説明が飛ぶのは、連想が次々に割り込む脳の性質と、次に言うことを保持しておく容量の不足が同時に起きているためである
  2. この記事が扱うのは話の「順序」の問題であり、話の「量」や話したあとの後悔は別記事で扱っている
  3. 順序を整える型は、本番中ではなく本番前に使う。結論・理由・お願いを3行で書いてから話す
  4. 不意に聞かれたときは「1分ください」と言ってから書く。話している最中に迷ったら「つまり」で自分に割り込む
  5. 連想の豊かさそのものは資産であり、順序だけを道具で補えばよい

まず今日これだけ試すなら、次に何かを報告する前の30秒で、結論・理由・お願いをそれぞれ短い単語で書き出してみてほしい。頭の中で絡み合って見える話も、書けば自然と並ぶ。


1人で仕組みを作るのが難しいと感じたら

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本記事は、ADHD当事者としての経験と学びをもとにした情報提供であり、医療行為ではありません。 診断や治療に代わるものではなく、特定の成果を保証するものでもありません。 症状にお悩みの場合は、医療機関にご相談ください。

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